良性発作性頭位めまい症(BPPV)-2:眼振の生じるメカニズム
- 院長

- 8月22日
- 読了時間: 3分
更新日:8月28日
前回のブログ「良性発作性頭位めまい症(BPPV)-1:垂直回旋性(すいちょくかいせんせい)眼振」で予告した、「眼振の生じるメカニズム」について説明します。
概説すると、
(1)後半規管の中に耳石(じせき)がある
(2)この耳石が、頭位変換により後半規管の中を移動する
(3)耳石の移動に伴い、内リンパ流が生じる
(4)生じた内リンパ流が、後半規管を刺激し興奮させる
(5)後半規管の興奮から前庭眼反射が起こり、眼振が生じる
ということになります。
(4)、(5)については、前回のブログの内容と重なるので、今回は(1)~(3)について解説します。
(1)後半規管の中に耳石(じせき)がある
図1をご覧ください。ベッドに座ったBPPVの患者さんが、左耳の三半規管の向きを示すイラストと共に描かれています。茶色く塗られた「CSP」が後半規管です。後半規管の中の一番低い位置に描かれている、青い粒子にご注目ください。これが、本来ここにはないはずの耳石(次のブログで解説予定)です。
三半規管の中に耳石があることこそ、BPPVという病気の本態であると今日では考えられています。この患者さんの場合、耳石のある半規管が左後半規管なので、正確な診断名は「左後半規管BPPV」となります。前回のブログの図1(動画)のタイトル「Left Posterior Canal BPPV」と同じです。
(2)この耳石が、頭位変換により後半規管の中を移動する
図1の1→2→3の頭位変換は、前回のブログの図1の動画の前半約20秒と全く同じ、左後半規管の平面内の運動、すなわち図2(前回のブログの図2と同じ)・Aの青色の平面「RALP」内の運動であることを再度ご確認ください(「RA」は「右前半規管」、「LP」は「左後半規管」の意味)。
図1・3の頭位を取ると、左後半規管の中の耳石が、重力により、さらに低い位置に移動します(図中、後半規管の中の白い矢印)。耳石は内リンパ(液)より重いので、下に沈むのです。
(3)耳石の移動に伴い、内リンパ流が生じる
半規管の中を移動する重い耳石は、同じ方向に内リンパを押し流します。図1・3の後半規管の中の白い矢印の方向が、図2・Dの金色の矢印と反対向きであることをご確認ください。

左後半規管(図2・Dの青色の点線)が金色の矢印の方向に回転したとき、半規管の中の内リンパ(液)が慣性の法則により元の位置に留まろうとするのと同様、内リンパは半規管内を金色の矢印とは反対向きに流れることになります。この内リンパ流は後半規管を興奮させる刺激になります。
以下、(4)(5)は前回と同じなので省略します。
最後までお読み頂き有難うございました。半規管の中の耳石が眼振を起こすメカニズムについて、ご理解いただけたでしょうか。次のブログでは、なぜ耳石が三半規管の中にあるのかについて解説したいと思います。




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